この恋の始まりはあの日から~何度すれ違っても、君を愛す~
「会えて嬉しい。ただ、君に会えて嬉しいよ静。」
「竜平さん…。」
「話したい事は山ほどあるが…まず、謝らせてくれ。すまなかった。」
竜平は頭を下げた。一年前の謝罪がやっと出来た。
「もう二度と、あんな想いはさせない。母とは縁を切った。」
苦い思い出が二人の間を横切った。
「…竜平さん、私…」
静は真剣な顔で竜平を見上げた。
「一年前は、もう二度とあなたに会わないつもりだった…。
あなたに迷惑かけたくなくて、全てを諦めてしまったの。」
あの日、自分に背を向けた事だろうと、竜平は思った。
「でも、今は違う。竜平さんが会いに来てくれないなら、
私から会いに行こうと思い始めていたの。」
「静…。」
背筋を伸ばして、静ははっきりと言い切った。
「会いたかった。」
「俺もだ。今日会えたことを、生まれて初めて神様とやらに感謝したいよ。」
「私、この一年たくさんあなたの事考えたわ。
この世に独りぼっちじゃない、身内がいるんだってわかっても…淋しかった。
あなたともう二度と会えないんじゃないかと思うと…淋しかった。」
「すまなかった…会いに行かなくて…。側にいてやれなくて。」
「私、もう何も諦めたくないの。」
「静…。」
「わがまま言わせて。私、側にいたい。竜平さんの側にいたい。」