この恋の始まりはあの日から~何度すれ違っても、君を愛す~
「静、俺の気持ちは変わらない。あのおかっぱ頭に触れた日からずっと…。」
「あの廊下でぶつかった日?あの頃から…?」
「キチンと君に伝えていなかった俺が悪かったんだ。
ずっと、君を…君だけを見ていたよ。好きだったんだ君の事が。」
静は驚いた。まさか10年以上前の話をされるとは思ってもいなかった。
「君さえ良ければ、今度こそ本当に婚約したい。」
「ホントに…? ホントに? 私でいいの?」
緊張の糸が切れたのか、静の瞳からポロリと涙がこぼれた。
「泣くなよ。」
「だって…。こんな事になるって…思ってなくて…」
「俺の気持ちを今度こそ信じてくれ、静。何度離れても君を探し出す。」
竜平は静の手をゆっくり握った。そして、指先にキスを落としながら囁いた。
「泣き虫で意地っ張りな静、俺と結婚を前提にもう一度始めてくれませんか?」
返事の前に、竜平は静を抱きしめていた。
離したくなかった。この腕に静がいる。
「いや… すぐに結婚しよう、静。嫌だとは言わせない。」
静はぎゅっと竜平の背に腕を回した。
「大好き…竜平さん…。」
「ああ、俺もだ。誰よりも君が好きだ。」
あの日から始まった恋。あれから何年過ぎただろう。
ほんの少しだけ、他の人より悲しい恋だったけれど、今は違う。
届くはずはない想いだと、何度もあきらめかけた。
でも、心の中で思い続けていた静の恋が、今、実った。