この恋の始まりはあの日から~何度すれ違っても、君を愛す~
「お待たせしました。」
「いつもながら、早業だねえ。」
控え室から出てきた静を見て、青木マスターは微笑んだ。
「そうですか?今度、着替えのタイム計りましょうか?」
「記録つけてもいいかもね。」
「じゃ、お花活けますね。」
「よろしく。」
カフェ・BLUEは、静が高校生の時に、ふらりと立ち寄った店だ。
学校の帰りにひと駅手前で降りてブラブラ歩いていた時にたまたま見つけた。
厳しい稽古に心が折れそうだった頃だ。
苦いコーヒーで気持ちを落ち着かせようとカウンターに座ったら
奥に一枚の絵ハガキが飾ってあって、それが目を引いたのだ。
『カリフォルニアだ…』
店の雰囲気はパリの下町風なのに、そこだけ抜けるような青空だ。
「気に入った?」
マスターに声を掛けられるまで、静はその絵ハガキを見つめていたようだ。