この恋の始まりはあの日から~何度すれ違っても、君を愛す~
ある日、祖父恒一郎に、旧友の高瀬晴信が馴染の古美術商を紹介した。
タカセコーポレーション社長の晴信と恒一郎は公私ともに親交があった。
大学時代から数十年に亘っての友人で、実業界と学術学会と住む世界は違っていたが、
馬が合うのかしょっちゅう行き来していた。
恒一郎の趣味を良く知る晴信が古美術商を紹介したのだが、
周囲も気付かない内に認知症が進行し、まだらボケ状態になっていた恒一郎は
古美術商の勧めるがまま、希少品を数点購入してしまったのだ。
悪い事は重なるもので、体調不良が続いていたに松子に重い病が見つかった。
緊急入院して手術に踏み切ったが、すでに手遅れの状態だった。
高齢の為、進行は遅いが治癒の見込みは無い。
松子の入院や代稽古のスケジュール調整などが続き、小松原家は慌しかった。
白河も静も、つい、恒一郎の事は家政婦に任せてしまっていた。
彼が高価な古美術を購入していた事に気付いた時には全てが遅かった。
法的にも打つ手が無かったのだ。