この恋の始まりはあの日から~何度すれ違っても、君を愛す~


解決策が見いだせなかった白河は、高瀬晴信に相談してしまった。

晴信は驚き、古美術商を紹介した責任を感じて
恒一郎の借金の後始末を快く引き受けてくれたのだ。

屋敷は担保とされたが、それも静と晴信の孫との結婚で相殺すると言うのだ。

高瀬竜平…学生時代、小松原邸に入り浸っていた人。
幼かった静が、胸をときめかせた相手…。

静の心は揺れた。

竜平が社会人になってからは、小松原の屋敷で彼の姿を見ることはなかった。

あれから何年も過ぎた。静は25歳になり生け花の世界で生きている。

8歳年上の竜平は、もう30半ばが近い。
祖父の会社 高瀬コーポレーション傘下の総合商社タカセで働いているらしい。

彼との縁談は、竜平の祖父高瀬晴信(たかせはるのぶ)が是非にと望んでの話だった。

『お金の事は考えないでね。私が竜平には静さんがピッタリだと思ったから
 結婚してはどうかなと思って勝手に申し込んだんだよ。』

晴信はビジネスマンというより、普通のおじいさんといった優しい表情で
縁談を持ち込んできた。



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