この恋の始まりはあの日から～何度すれ違っても、君を愛す～

突然の申し出に、静と白河は驚いたが、
随分と前から、祖父母は晴信に相談していたらしい。

『自分たちがこの世からいなくなったら、静は天涯孤独になってしまう。』

二人が亡くなった後も静を支え続けて欲しいと願う祖父母に対し、
晴信は必ず静を幸せにしてくれる結婚相手を見つけると約束していたのだ。

白河から、恒一郎の認知症と松子の重い病状を聞いた晴信は、
旧友との約束を守り、自身の孫の竜平と静の縁談を持ち掛けた。

晴信からからすべてを聞いた静に、この話を断る理由は見つからなかった。

白河清吾と何度も相談したが、借金返済の方法は屋敷の売却以外ない。
それだけはどうしても避けたかった。

静は覚悟を決めた。祖父母のために、この屋敷を守りたい。
たとえ相手にとって同情からの縁談だとしても、育ててくれた二人を安心させたい。

祖父の恒一郎は口数の少ない人で、打ち解けてお喋りする事はなかった。
祖母の松子からは、いつも厳しい言葉しかかけられなかった。

静は、両親とは全く違う祖父母の態度から、
望まれて父の実家に引き取られたのではないと思い込んでいた。