この恋の始まりはあの日から~何度すれ違っても、君を愛す~
新しい関係
竜平の想い
ピピピピピ…
目覚ましのコール音が聞こえる。ベットサイドに手を伸ばしアラームを止めた。
高層マンションの最上階の部屋は明け方とはいえまだ薄暗い。
高瀬竜平の朝は早い。独り暮らしのマンションは味気ないほど殺風景だ。
コーヒーを飲みながら経済ニュースを見て、
世界の株価と為替相場をチェックするのが朝のルーティンワークだ。
経済ニュースが流れるテレビをつけっぱなしにして、
夜の間に届いたメールを確認しようとパソコンを立ち上げる。
昨日届いたメールの中で1件だけわざと無視していたが、つい開いてしまった。
祖父からだ。
『小松原家、了承とのこと。準備されたし。』
「マジか…。」
少し伸びた前髪をクシャクシャにかき上げて、竜平は目を閉じた。
いくつかの懐かしい思い出が湧き上がってくる。
小松原家の古い日本家屋独特の香り。季節ごとに庭のあちこちで咲き誇る花。
そして、目にいっぱい涙を溜めていたあの子。
それでも声をあげて泣くことはなかったあの子。
「あの子と結婚…。じいさんの言いなりにはなりたくなかったが…。」