この恋の始まりはあの日から~何度すれ違っても、君を愛す~
「お疲れさん、静。この季節に良い桜があったなあ。」
「今回も輔くんが、お花を探して来てくれたの。」
「静さんの頼みなら、世界中からどんな花でも取り寄せま~す。」
老舗フラワーショップの息子、小宮 輔が
床に散らばった花材を片付けながらふざけて言った。
輔は、栗色のサラリとした長めの髪形がよく似合う美青年だ。
外見はクールに見えるのに、ふとした表情に愛嬌があり性格は穏やか。
浩太とは対照的なタイプだが、こちらにもファンが多い。
ニコニコと二人を見つめている静は、今日も落ち着いた色合いの着物姿だ。
真っ直ぐな長い黒髪をひとつに纏め、深い藍色の紬に緋色の襷を掛けている。
小松原静は、京都に拠点を置く新興の華道
華宵流東京支部師範でフラワーアーティストの仕事もしている。
幼馴染の浩太と、大手のフラワーショップで花の仕入れを担当している輔とは
何年も組んで仕事をしてきた。三人は仕事抜きでも付き合える友人だ。
この日も三人で、遅めのランチをとることになった。