この恋の始まりはあの日から~何度すれ違っても、君を愛す~
高瀬竜平は高校生の頃、一時不登校だった。
自分の居場所は何処にもないような気がしてすさんでいた。
仕事もプライベートも、祖父のイエスマンの父。
ひとり息子に期待してトップクラスの大学を目指せとしか言わない見栄っ張りの母。
私立の学校では、教師や友人に心を開けず疎外感を感じた。
おまけに自身もプライドだけは高く、自分の能力は高いと思い上がっていた。
声を掛ければ、女の子はすぐついてくる。遊び相手に不自由したことはない。
ただ、過ぎ行く時間に流されていた。毎日がつまらなかった。
そんな竜平の怠惰な暮らしを見かねた祖父が、
旧友だという小松原氏の屋敷に碁を打ちに行こうと誘ってくれた。
小松原恒一郎はいわゆる学者肌の人で、俗世の事には興味を持たない人物だった。
祖父の側で話を聞いていると二人の話題は豊富で、
他愛ない会話の中に哲学的な言葉がいくつもあった。
恒一郎に教わりながら将棋を指したり碁を打ったりした。
書斎にある膨大な蔵書も、自由に閲覧させてもらった。
気付けば小松原邸に入り浸っていた。学校より深い世界がそこにはあったのだ。