この恋の始まりはあの日から~何度すれ違っても、君を愛す~


 ある日竜平は、廊下で10歳くらいの女の子とぶつかった。
家政婦が噂していた帰国子女だとかいう孫娘かな…と思い出し、
顔を良く見れば、青みがかった大きな瞳に涙を溜めていた。

思わず、その子の頭に手を置いてしまった。ポンポンと軽く触ってみた。

どうして見ず知らずの女の子にそんな事が出来たのか、今でもわからない。
ただその子にとって、頭を撫でる事が一番欲しそうなものに思えたのだ。

その日、自分では理解できない感情が芽生えた気がした。
その子に対して抱いたのは興味だったのか、同情だったのか…。

 気をつけて女の子を見ていたら、日本語が苦手なようだった。
出会う度、竜平に話しかけたそうに小さな口をパクパクさせていた。

ある日、思い切ってその子に声をかけてみた。
「俺と、英語で喋ってみるか?日本語でもどっちでもいいよ。」
 
話しかけた事で、少しずつ女の子との接点が増えていった。
静という名の女の子は、普段は大人しそうだが自分と喋る時は明るい表情だ。

英語と日本語のごちゃまぜで話していると、嬉しそうによく笑う。
素直で愛らしい女の子だ。

グレた自分と違って、きっと温かい家庭で育てられたのだろう。
両親から、さぞ愛されていたのだろう。




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