この恋の始まりはあの日から~何度すれ違っても、君を愛す~
 

 三人が常連のイタリアンレストランは、新宿駅から少し離れた場所にある。
 
 静は少し前から、この店を飾る花を週に一度活ける契約をしていて
スタッフともすっかり顔なじみになっていた。

今週は色とりどりのコスモスを大きな花器に無造作に投げ入れている。
渋い信楽焼の花器が秋の深まりを感じさせていた。

店の中央に花器を置いているが、すべての角度から完璧な仕上がりだ。
大胆に見えて繊細な技術。これが、静が人気華道家である秘密かも知れない。


「あら、お揃いでいらっしゃいませー。」

オーダーストップに近い時間だったが、スタッフは三人を快く迎え入れてくれた。
明るい窓際の席に案内され、それぞれお気に入りのパスタを注文する。

「編集長も喜んでたよ。小松原のページ好評みたいだ。よくやったな、静。」
 
「前園が回してくれる仕事はいつもレベルが高くて勉強になるの。ありがと。」
「どういたしまして。目の肥えた読者層だから張り合いがあるだろ。」

「うん。毎月の撮影が楽しみよ。」

「二人って、呼び捨ての関係だったっけ?同級生だからってズルいな~。」

冷たい水で喉を潤すと、輔が不貞腐れたように文句を言ってきた。

「俺ら小学校時代の同級生だからな。怒るな、ガキ。」
「え~っ、つ~か、ガキ扱いしないで! 僕ら2つしか違わないじゃん。」

「2つも違えば、ガキだよ。」
「酷い!静さん何とか言って!」

「相変わらず、仲いいのねえ二人って。」

静は輔の訴えを、ウフフ…と軽く笑い飛ばした。




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