この恋の始まりはあの日から~何度すれ違っても、君を愛す~


 織江は竜平の母親が高瀬家に嫁いで来たころからの家政婦で、
竜平の子供時代のエピソードなども気さくに話してくれた。

彼は随分やんちゃな子どもだったそうだ。
明るい性格の織江のお陰で、静の表情は次第に柔らかくなっていった。

婚約者同士になったとはいえ、二人は基本的に忙しい。
デートをしたくても時間がとれない程、すれ違いの日々だった。

竜平は仕事上、昼夜関係なく働いていたし海外出張も度々だ。
静は仕事と祖母の看病がある。お互いの時間を合わせにくかった。
自由に過ごせるマンションだけが、二人を繋いでいた。

今まで、仕事以外で異性と交流した事がなかった静には、
普通の恋人関係など想像でしかないのだが、
自分たちの付き合い方がおかしいのはなんとなく感じていた。



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