この恋の始まりはあの日から~何度すれ違っても、君を愛す~
輔は静の変化を前園浩太に伝えようと、飲みに誘う事にした。
今日は男二人で飲み会だ。静抜きの場合は居酒屋に決めている。
焼き鳥の焦げ臭さにビールが上手い。男同士の会話には持って来いの場所だ。
アルコールが回った頃、輔は浩太に話を振ってみた。
「浩太は、いいの?」
「何が?」
「静さん、取られちゃうよ。」
「うるさい。」
「何がカタチだけの婚約だよ。静さん御曹司にほだされてるみたいだよ。」
「うるさいな!」
この話題になると浩太の機嫌は悪くなる。
「せめて、気持ち伝えようよ。今なら間に合うんじゃない?」
「ほっといてくれ。間に合う間に合わないの問題じゃないんだ。ガキ。」
輔があれこれ話せば話すほど、ますます言葉まで悪くなってきた。
浩太はグビグビとビールを煽っている。
「また、ガキ扱いする~。」
「俺は、あいつを小学生の頃から知ってるんだ。今さら…。」
「う~ん、可愛かっただろうな、小さい頃の静さん。」
輔は幼い頃の静を想像してうっとりした表情を見せた。
彼にとって静は憧れの存在だ。彼女と一緒に仕事が出来るだけで満足している。
親友の浩太と静が結ばれてくれたらとさえ思っていたのに、
突然現れた高瀬竜平の存在は脅威だった。