この恋の始まりはあの日から~何度すれ違っても、君を愛す~


 食事を終えてコーヒーが運ばれてくると、浩太が静に尋ねた。

「その後、じいさまの具合はどうだ?」
「ありがと。心配かけてゴメンなさい。やっと施設に入って落ち着いたの。」

「チョッと安心したな。」

「どうかなあ…。認知症は進んでるし心臓もかなり弱ってるし…。」

「そうなのか…ばあさまの方は?入院して療養中だろ。」
「あまり変わらないかな。お祖父さまに会いたがってるけど、 
 今のご様子だと、チョッと面会は無理だから…。」

「おまえ、仕事と屋敷の事と、ばあさまの代稽古もあって忙しいだろ。」
「うん。大丈夫よ。」

「お前の大丈夫、当てにならないからなあ…無理してないか?」
「もちろん、元気元気!」

静はふざけた調子で答えてから、話題を変えた。

「ちょうど良かった。今日は二人に伝えておかなきゃいけない事があって。」

なるべく明るい声で話そうとしている静の口調に
浩太と輔は何かを感じたのだろう。彼女は二人の視線を痛いほど感じた。


「私、婚約するの。」


ランチタイムが終わりかけた時間帯、イタリアンレストランの人影はまばらだ。
暫くの沈黙のあと、浩太がポツリと言った。

「相手は?俺の知ってるヤツか?」

高瀬竜平(たかせりゅうへい)さんよ…。」




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