この恋の始まりはあの日から~何度すれ違っても、君を愛す~
「待たせたな。」
「あ、高瀬部長。」
にこやかに、綾子が竜平に駆け寄った。
「これを山室本部長に渡してくれ。」
「わかりました。他にご用はありませんか?」
「特にない。」
「じゃあ、成田までご一緒してよろしいですか?」
「はあ?」
「お見送りさせて下さい。」
「…勤務時間中だ。急いで会社に帰りなさい。」
「わかりましたわ…。」
綾子は玄関まで送りに出た静を、ひと睨みしてから帰って行った。
彼女が出て行くのを待っていたかのように、竜平が玄関に立つ。
「それじゃ、静、車が下に来てるから、行ってくる。」
「はい…。」
「どうかしたか?」
「いえ…。」
「10日くらいで帰国する予定だから。帰ったら連絡する。」
「わかりました。お気をつけて…。」
力なく笑う静を気にしながら、竜平は出かけて行った。