この恋の始まりはあの日から~何度すれ違っても、君を愛す~
「やあ、静。」
日が暮れてから、カフェ・BLUEに前園浩太が姿を見せた。
「まあ、珍しい。顔を見に来てくれたの?」
「いや…半分は仕事なんだ。」
「しごと…。ここで仕事の話?」
「そうなんですよ、静。いい話です。」
浩太の後ろから、突然東京支部長の御堂院大和が顔を覗かせた。
その腕に愛らしい女性を連れている。
今日はカジュアルなシャツにゆったりしたパンツを合わせて都会的な雰囲気だ。
標準語に柔らかな関西風のアクセントが混ざって、独特の口調になっている。
「前園さんに教えてもらって驚きました。ここで働いていたんですねえ。」
「どうぞどうぞ、ごゆっくりして下さい。コーヒーは何にしましょう?」
マスターの青木は人懐っこい笑みを浮かべて三人を招き入れた。
「どれも美味しそうですが、私は、マンデリンにミルクたっぷりで。」
大和は意外にクリーミーな味が好きらしい。それを聞いた音羽は、
「私も、同じものを…。」
と、小さな声で注文していた。
「マスター、俺はアイスコーヒー。」
「はい、オーダー承りました。」
三人は奥の席に陣取ると、早速、何か話し始めていた。
「静ちゃん、コーヒー持って行ったら、話しておいで。」
「そんなマスター、お仕事中…」
「もう、他にお客さんいないから大丈夫。ゆっくりしてね。」
「ありがとうございます。」