この恋の始まりはあの日から~何度すれ違っても、君を愛す~
浩太は二人にあてられたのか、ムスッとアイスコーヒーを飲んでいる。
慌てて静は浩太に尋ねた。
「あの…それはどんな仕事でしょうか?」
「静も聞いたことあるかな?関西を中心に展開している大型商業施設なんだけど、
関東にも進出する事が決まって今、都内で建設中なんだ。」
「ええ、新聞で読んだ気がします。」
「そこで、いわゆるお稽古事…昔風に言えば花嫁修行的な?講座を開きたくて。」
「そう言ってしまうと、今の若いお嬢さんは反発しますよ。
料理や、華道茶道とかは、自分磨きに置き換えていかないと…。」
大和がやんわり音羽を見ながら訂正を入れた。
音羽は頷いてみせ、大和に同意している事を伝えた様だ。
「ですよね~。なので、結婚の為ではない自分の為の教養講座として
…趣味を一歩深めた講座を新しい施設で取り上げたいなと企画したんです。」
「面白そう…華宵流も参加されるんですか?大和さん。」
「その会社は、関西では有名ですからね。社長の奥様はうちのお弟子さんですし。」
「まあ、それは大変ですね、力が入るでしょう。」
「何、他人事みたいに言ってるんですか、あなたも働くんですよ。」
「私?」
「そうです。静、ここのお店の花を活けてるでしょ。」
花瓶に活けられた涼し気なアガパンサスに目をやり、大和が言い当てた。
「は、はい…。すみません…。」
「何を謝ってるんですか?」
「流派的に…チョッと違うニュアンスですので、叱られるかなと…。」
「バカな。あなたは才能がありますからね、叱る訳ないでしょ。」
「大和さん…。」