この恋の始まりはあの日から~何度すれ違っても、君を愛す~
フッと苦笑いをして、大和は別の話を始めた。
「不思議な事に…私の父、家元の御堂院大雅は革新的な華道家です。
でも、父の姉、つまりあなたのお祖母様は、古典がお得意だったそうですね。」
「はい。祖母は意見がいつも合わなかったと言っていました。」
「大昔の話ですねえ。ところが、不思議な事に私の兄、次期家元の和臣は、
古典が得意なんですよ。」
「まあ、革新派のお家元から古典派の後継者が…?」
「そして私は…中庸です。そのどちらでもない。」
「いえ、私から見れば素晴らしい華道家でいらっしゃいます。」
フンッと、大和は鼻を鳴らした。
「あなたに言われたくありませんねえ。」
「は?」
「才能がある人に、嫉妬してますからねえ…私は。嫉妬深いんです。」
「嫉妬…?」
「あなたとの仕事が楽しみだって事です。」
大和程の人物に嫉妬と言われても、静はピンとこなかった。
「とにかく、今度の仕事は二人で取り組みますから、よろしくね。」
「こちらこそよろしくお願いいたします。」
大和に乗せられて、また一つ静の仕事が増えてしまった。