この恋の始まりはあの日から~何度すれ違っても、君を愛す~
浩太は努めて明るく喋った。
「信じがたいよ。俺が知ってる二人は無口だったし、
お互い空気みたいだったからな。あれで、若いころ大恋愛なんてしてたのか。」
「たぶん、今も恋してるみたいよ。会いたい会いたいって、
お祖母さまは口癖みたいに言うの。」
「ある意味羨ましいな。」
「前園でも、恋したいんだ。あ、恋してるのかな?」
「まあな。静は?」
「え? 私が恋…?」
静の目から突然ポロリと涙がこぼれた。
「あ、ごめん。目にゴミ入っちゃった。」
慌てて、浩太から顔をそむけた。
長い事、涙なんか流していなかった。祖父の葬儀でさえ、淡々とこなした。
何故、今になって涙が出たのか静にもわからなかった。
浩太に見られたくなくて、顔を隠してしまった。