この恋の始まりはあの日から~何度すれ違っても、君を愛す~
そんな静の様子は浩太には不安でしかなかった。
輔から、高瀬との関係は順調だと聞いていたから真逆の反応に驚いた。
「静…。お前、あいつと上手くいってるのか?」
「高瀬さんとの事? 別に…。前園には関係ないし…。」
浩太に背を向けたまま答えた。
「お前は結構苦労してて、人生には擦れてるのに男には擦れて無いからな。」
「意味わからないわ。」
「文字通りさ。」
静には返す言葉が浮かばなかった。
両親の死に始まって、確かに人生経験は次々重ねてきた。
だが、異性の事など何もわからない。竜平との関係も綱渡りのようだ。
自分の弱点を言い当てられた気がした。
振り向いて、元気よく声を掛けた。
「そろそろ帰りましょう。寄り道しちゃったね。」
「静、辛かったら、俺のとこ来いよ。」
「え?」
浩太はゆっくり静に向き合うように近付いた。
「お前が、俺でも良ければな。」
「前園…。」
「俺は、静がいいんだ。」
浩太を見上げながら、静は大きく目を見開いた。
「考えておいてくれ。」
浩太はそれ以上何も言わなかった。
二人はゆっくり歩いて公園を後にした。