この恋の始まりはあの日から～何度すれ違っても、君を愛す～

邪心

前園浩太が持ち込んだ仕事は順調に準備が勧められた。

商業施設の完成前に、同じ系列のデパートの催し会場を借りて
デモンストレーションをする事になった。

御堂院大和の名前がポスターにあると、それだけで客が集まると言われるほどだ。
今回の生け花教養講座にも、申し込みが殺到したらしい。
抽選で、午前の部と午後の部それぞれ30名程度が選ばれた。
その中には、大和の恋人でデパートの受付嬢
遠藤音羽(えんどうおとわ)も名前もあった。大和の紹介枠で決まったらしい。


音羽は、受付嬢とあって愛くるしい顔立ちの美声の持ち主だ。
だが、生け花に関しては全くの初心者だった為、今回の参加が決まったらしい。
大和が次男だったから二人の結婚は認められたようなものだ。
もし長男だったら、家元の猛反対にあっただろう。

音羽は明るい性格だった。静に対しても屈託なく話しかけてくれ、
何度か大和と一緒に会っているうちに打ち解けてきた。
女友達が少ない静には得難い存在となっていた。

「静さん、生け花の事、何もわかりませんのでよろしくお願いします。」
「大丈夫ですよ、音羽さんにお花が好きになっていただけたら十分です。」

「お教室何て初めてで…当日は緊張しそうです。」
「プロモーション用の撮影もありますからね。」
「う～、ドキドキしてきた～。」

「フフッ、お互い頑張りましょうね。」