この恋の始まりはあの日から～何度すれ違っても、君を愛す～

９月のある土曜日、デパートで華宵流のデモ教養講座が行われた。

長机をいくつか並べた会場の周りには、大和と静が活けた参考作品や
アレンジされた幾つもの生け花が飾られて華やかな雰囲気だ。

デモ講座とはいえ華宵流のイメージアップにも繋がりそうなイベントになっていた。
午前の部は何事もなく終わったのだが、午後の部が始まって静は驚いた。

音羽が参加するのは知っていたが、佐川綾子も会場にいたのだ。
どういうルートで参加出来たのかはわからないが、
何となく嫌な予感が静にはあった。

着物姿の年配の参加者もいれば、カジュアルな雰囲気の若い女性もいる。
それぞれ自由に座り、花を触ったり隣同士で喋ったり楽しそうだ。

綾子の姿にわずかに動揺を見せた静の気持ちを察したのか、
遠藤音羽が綾子のすぐ横の席に着いてくれていた。
どうやら静とのクッション役を果たそうと、気を利かせてくれた様だった。