この恋の始まりはあの日から~何度すれ違っても、君を愛す~
「モチロンよ。お祖母さま、喜んで下さってるわ。
…闘病中だというのに、私が心配でしょうがなかったんだもの。」
「形だけって…。ホントに結婚するんじゃないんだな。」
「そうよ、お祖母さまに安心していただくための婚約だもの。
ただでさえお祖父さまが施設に入居してショック受けてるのに、
私がお二人の世話ばかりして独身でいるのがお辛いみたい。」
輔が口をはさみたいのに、タイミングが掴めない。
「向こうからの申し出か?」
「それは…ヒミツという事で…お仕事に影響したらいけないから
二人には伝えておこうと思ったの。この事は誰にも言わないでね。」
「お前はいいのか? 敢えて詳しい事情とやらは聞かないが…。」
「うん。白河さんと何度も話しあったよ。お祖母さまの為にって。」
「小松原家を取り仕切ってるあの人も了承したか…。」
「ちょっと待ってってば! 話についていけないよ。」
「あ、輔くん、ごめんなさい。
私の子供の頃の事、話してなかったものね。」
「もし、良かったら聞かせて。僕だって、静さんの仲間だよ。」
「…ありがとう。ランチタイム終わってるし、お店出てから話そう。」
それから三人は新宿御苑の近くをのんびりと駅に向かって歩いた。
静は、何から話せば良いのか迷いながら、ぽつぽつと記憶を辿っていった。
両親が亡くなって日本に来た小学生の頃に遡って…