この恋の始まりはあの日から~何度すれ違っても、君を愛す~
時間通り、講座は始まった。
決められた花材を使った生け花は皆楽しそうで、美しく完成させていく。
経験者が多い中、音羽と綾子は慣れない花鋏に苦労していた。
続いて、アレンジを練習する事になった。参加者は自由に花材を選ぶ。
綾子はアレンジ用にナツハゼを選んだので、切りにくそうにしていた。
30人を大和と二人で指導するのだが、彼はすぐにファンに捕まってしまう。
仕方なく、静は綾子の側に行き、花鋏を使うコツを教えた。
切り口も少し斜めにして、刃を大きく開いてスナップをきかせる…
「そう、お上手ですね。上手く切れてますよ。」
静が手を添えて、思った以上に上手く切れた。
安心して、静が別の受講生の方へ行こうと綾子に背を向けた時、
「痛い!」
背後で、綾子の声がした。
驚いて振り向いて見ると、指先を少し切っている。
「じっとして下さいね、すぐ手当しますから。」
「酷いわ!この教室は受講生に無理やり硬い枝を切らせるなんて…。
大事な手を怪我しちゃったじゃない!」
「そんな…。」
「なんて酷い講師なんでしょう!」
綾子の声は大きく、周りの受講生はヒソヒソ小声で話している。
誤解されてはたまらないが、興奮している綾子に何を言えばいいのか
静は一瞬、躊躇した。