この恋の始まりはあの日から~何度すれ違っても、君を愛す~


 その夜、竜平は驚いた。夜10時過ぎて帰宅したら織江がいたのだ。

「こんな遅くにどうした?」

「申し訳ございません。直接お伝えしなければと思いまして。」
「何かあったのか?」
「奥様が、何だか静様の事をとてもお怒りでございまして…。」

織江も具体的には何が起こったのか知らない様だった。
ただ、高瀬家で竜平の母親の機嫌が悪い事と、
静がマンションの鍵を織江に返しに来た事を竜平に伝えた。


「静様が夕方ここへ鍵を返しにいらっしゃいまして…その時私に
 お世話になりましたとおっしゃいました。
 …もうこちらには来られないおつもりではないかと思って…。」

鍵を握りしめながら、竜平は思わず声を荒げてしまった。

「まさか!急にそんな…。」

「最近、静様の雰囲気がとても柔らかくなられて、とても良い傾向だと
 思っておりましたのに、私の力不足で突然こんなことに…。」

「いや、お前のせいじゃない。今日、何か(・・)があったんたんだ。」



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