この恋の始まりはあの日から~何度すれ違っても、君を愛す~
「奥様がおっしゃるには、お花のお教室で佐川綾子さんと静様にトラブルがあったらしく、
奥様が華宵流東京支部へ直接お出ましになった様でして…。」
「はあ?トラブル? あの人は何を考えてるんだ…。」
「奥様の事より…。」
「まだ気になる事があるか?」
「はい。あの綾子さんとおっしゃる方にはお気を付け下さいまし。」
「あれか。」
「この前、嫌な目で静様を見ておられました。」
確かに、綾子には裏表がありそうだ。
これまで母の顔を立てる為、竜平も態度を曖昧にしていた事を反省した。
「すまなかった、織江。気を遣わせてしまったな。」
「私は静様が大好きですので、坊ちゃまのお力になりたいだけでございます。」
「その呼び方だけはやめてくれ。」
いつもの癖で、前髪をクシャクシャにしながら竜平はソファーに腰掛けた。
明日、会社で佐川綾子に会うのが憂鬱だった。
その前に、静に何があったか正確な情報が欲しかった。