この恋の始まりはあの日から~何度すれ違っても、君を愛す~

東京支部の応接室に、遠藤音羽が入ってきた。

「丸高デパートに勤めている女性です。昨日の講座にも参加していました。」

「昨日、静がトラブルにあった時、いらっしゃったんですね。」

竜平が尋ねると、コクリと音羽が頷いた。

「昨日はとても素敵な講座で、参加者の皆さんは楽しんでおられました。
 でも、佐川さんとおっしゃる方が、花鋏で指を怪我したのは講師のせいだって
 突然騒ぎ出したんです。」

「佐川…うちの会社の佐川綾子ですね。」
「佐川総合病院のお嬢様とか…。」

大和が口を挟んだ。

「はい。母の友人の娘です。」

「そうでしたか…それであんなにお怒りだったんですね。」
「申し訳ない。ご迷惑をお掛けして。」

「これを見ていただくとわかると思いますが…。」

ため息をつきながら大和がパソコンを立ち上げ、画面を竜平に向けた。

「昨日は参加者にも文書でお知らせしていましたが、
 デモ講座の様子はプロモーション用に撮影させてもらってました。」

大和が画像をいじると、そのシーンが出てきた。
静が綾子に指導し終わって、背を向けて離れてから綾子が騒いでいる。

画像を拡大すると、綾子が自分で花鋏を握り込む様子もわかる。

「何て事を…。」

音羽も顔色が悪い。見せられて気持ちのいい映像では無いのだ。


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