この恋の始まりはあの日から~何度すれ違っても、君を愛す~
「昨日、あなたのお母様は佐川家のお嬢様から話を聞いてすぐに
ここにいらっしゃいました。一方の意見だけでは判断が難しいでしょうから、
何があったか映像をご覧いただいてご説明いたしました。」
「そうでしたか…。」
竜平は力なく頷いた。自分の母親とは言え情けなかった。
「事実を確認して、一応は納得はしておられましたが…。」
「すみません、母がとんでもないご迷惑を…。」
「いえ、昨日は静もここにおりましたので…」
「えっ?」
「静はお母様とも初対面だったんですねえ…婚約してるとか聞いてましたが。」
益々、大和の声は竜平に対して皮肉っぽさを増していく。
「チョッと、その件には複雑な事情がありまして…。」
「ほお~、複雑なねえ…。」
「それで、まだ何か母が無理を申しましたか?」
「いえ、華宵流には何も。静には何か言っておられましたが私は存じません。」
「そうですか…。」
これ以上の事は大和から聞けそうにないと竜平は悟った。
どうやら彼に嫌われているらしい。