この恋の始まりはあの日から~何度すれ違っても、君を愛す~
その日から松子は静に時折語り掛けるようになった。
ベッドに横たわったまま、呟く様に話すのだ。
取り留めのない話だったが、何かを静に伝えたい気持ちはよくわかった。
ほんの一言ずつ、ふり絞るように松子は話した。
「私と恒一郎さんは、あなたに何もしてあげられなかったわね…」
「私たち夫婦は、子育てに自信を無くしてしまっていたの。
…特に、教育者だった恒一郎さんは…。」
松子はゆっくりと小さな声で途切れ途切れに話す。
聞き取るのが難しい事もあったが、根気よく静は耳を傾けた。