この恋の始まりはあの日から~何度すれ違っても、君を愛す~
「佐川さん、電話取って。お願い。」
「はあい。」
「はい、総合商社タカセ 秘書室でございます。」
『わたくし、華道華宵流事務長の白河と申します。
お仕事中大変申し訳ございませんが、高瀬竜平様に
お伝えしたい事がございまして、お繋ぎいただけませんでしょうか。』
華宵流と聞いて、綾子はピンときた。あの小松原静の関係者だ。
「申し訳ございません。ただいま会議中で席を外しておりまして。
戻りましたら、こちらからご連絡させていただきます。」
『さようでございますか、お忙しいところ恐縮でございます。
なるべく早くご連絡いただけたらと思いますので、
くれぐれもよろしくお願いいたします。』
「はい、承りました。失礼いたします。」
隣で仕事をしていた秘書の一人は、怪訝そうに綾子を見た。
バタバタしてはいるが、役席はみなデスクにいる。
会議もないし、席空きもいない。
『誰への電話だったのだろう…。』
忙しさに紛れて、その秘書もそれきり電話の件は確認しなかった。