この恋の始まりはあの日から~何度すれ違っても、君を愛す~
「ええっ!そんな急に松子さんが…。」
「お前がフランクフルトに行く前から危篤だったらしい。
葬儀の時に聞いたんだが、白河事務長がお前の会社に連絡したら、
会議中だとかで繋いでもらえなかったそうだ。」
「聞いていない…。」
「折り返し連絡を頼んだが、それきりナシのつぶてだったと聞いたぞ。
うちの秘書課がそこまでお粗末だと思いたくないが…。」
「そこは、後で俺が確認する。
とにかく静は今、何処にいるんだ?」
「彼女は… 屋敷を処分して…例の代金を私に全額返してくれたよ。
恒一郎さんの形見だから美術品も預かっていて欲しいと届けてくれた。」
晴信は淡々と告げた。逆にますます竜平はヒートアップしていく。
「あの屋敷を処分した?彼女は何処にいるんですか! 教えてくれ!」
デスクに向き合って晴信と竜平はにらみ合った。
「それは出来ない。彼女との約束だ。
お前には何も知らせてくれるなと言われている。
わしは知らなかったが、お前の母親が静さんと会ったそうだな。」
「ああ…随分前だ…。」
「お前から離れてくれって彼女に頼んだらしいぞ。」
「何だって!」
竜平の大声に、秘書の一人が何事かと飛び込んできた。
「静さんは…お前の幸せを祈っていると言っていた。」
「そんな…。」
…どうしてこうなった…。