この恋の始まりはあの日から~何度すれ違っても、君を愛す~
竜平は翌日も小松原邸を訪れた。
諦められず、何か手掛かりを探そうと思っていた。
車で屋敷に乗り付けると、門の前には黒塗りの高級車が止まっていた。
車の側に、白河ともう一人和服姿の男性の姿が見える。
「白河さん!」
竜平は急いで車から降りて、迷わず声を掛けた。
白河が竜平を見て驚いた。
「高瀬様…ドイツだとばかり…、日本にお帰りだったのですか?」
「昨日、帰国したばかりです。あなたにお聞きしたい事があるのですが。」
竜平は白河に詰め寄った。
しかし、白河は竜平の言葉を遮り、和服の男性を気にしながら別の話を始めた。
「…こちらのお屋敷…小松原邸はこの程、華宵流東京支部の所有になりました。」
「えっ?」
「こちらの方は、次期お家元のご長男で、静様の又従兄妹和臣様です。」
「それは…失礼いたしました。高瀬竜平と申します。」
静の又従兄妹と聞いて、大和の兄だと気がついた。
失礼の無いよう、竜平は一礼した。
「あなたが…あの高瀬さん。」
静の又従兄妹だという男性は、竜平が名乗ると少しだけ驚いた顔を見せたが、
白河に訳ありげに頷くと、高級車に乗って小松原邸を離れていった。
「少しお時間よろしいですか?高瀬様」
「もちろん。こちらこそ白河さんお聞きしたい事が山ほどあるのです。」
「こちらも…立ち話では出来ない他人に聞かれたくない話がありまして。」
「そうですね、私の車の中でどうでしょう。」
竜平は、乗ってきたドイツ車に白河を案内した。