この恋の始まりはあの日から~何度すれ違っても、君を愛す~
「その頃、祖父のお友達の息子さん…高瀬竜平さんが
屋敷によく遊びに来ていたの。」
「学生の時に?よくじいさまの所に遊びにきたね。」
輔が不思議そうに言った、自分なら年寄りの相手は御免だと言いたげだ。
「どうしてかなあ…今考えたら不思議よね。」
「まあな。でも、静はその男に憧れたんだろ?」
「他に出会いのない環境だったし、中学生から見たら
大学生ってカッコよく見えるじゃない…それだけよ。」
サラリと静は答えたが、真実は違っている。もっと真剣に憧れたのだった。
「その人と…ケッコンする訳…?」
「嫌だ、輔くん。お祖母さまの為に形だけって言ったじゃない。」
「あ、ゴメン。初恋の君っていうから静さん本気かなって…。」
静は、フット息を吐いた。
「そんな事ないわよ…結婚なんて無理だもの…。」
遠くに見える高層ビルを眺めながら、竜平の事を考えた。
『もう何年も会ってないな…』
幼い頃の思い出は、ほろ苦く胸の中に広がった。