この恋の始まりはあの日から~何度すれ違っても、君を愛す~
おまけに綾子は、知り合いのフリーライターをそそのかしていた。
あの日、白河から受け取った週刊誌のネタは、綾子が仕組んでいた物だ。
中身はお粗末で、華宵流東京支部の華道家が有名企業の御曹司を
婚約者である大病院の令嬢から略奪しようと企んでいるという物だった。
おまけにその華道家は、幼なじみやら取引のあるフラワーショップの息子と
浮名を流していると書き連ねてあった。許せる内容ではない。
この偽の情報を流し、綾子はスキャンダルを起こそうとしていた。
静の幼馴染の前園浩太が早くに情報を掴み、家元が乗り出したおかげで
記事が週刊誌に乗るのを未然に防ぐことが出来た。
万が一その記事が発表されたら、華宵流に大きなダメージを与え、
静の華道家としての生命を絶つところだったのだ。
静と縁談があった竜平の会社での立場も傷つけ、将来に禍根を残しただろう。
あの記事が再び世に出たら、綾子を名誉棄損で訴えると佐川家にも通告した。
静が竜平の前から姿を消した複雑な理由を前に、彼は為す術がなかった。