―17段目の恋― あのときの君とまさかの恋に落ちるとき
「あのさあ」

龍道コーチは足を止めて透子に向き合った。

「まずどこで勘違いしたのか知らないけど彼はゲイじゃない。そして彼が好きなのは俺じゃない。俺じゃなくて水之さんだから。まったくここまで鈍いとむかつくレベルだな」

今にも舌打ちしそうな苦い顔をしている。

「そんなはずないわよ。ゲイだよねって確認したらそうだって答えたし。ドラゴンウエイだって龍道コーチがいるから通い始めたんだもの」
「ゲイかと聞かれて話を合わせただけだよ。ていうか、どんな流れでそんなこと確認すんだよ。あと俺が好きでドラゴンに入ったらならどうして水之さんと一緒に辞めるわけ?」

確かに。
なんでやめちゃったのかなあと首をかしげて考え始めた透子に「本当は言わない約束だったけど」と前置きをして、今度は龍道コーチが話し始めた。

田淵さん、俺にこういったんだ――

「僕、透子さんが好きで、コーチとの偽装カップル期間が終わったら告白するつもりでいたんだ。それなのに告る前にあなたにかっさわれた。コーチがアメリカに行った後、契約の1か月が終わっちゃうから付き合いも終わっちゃうって、彼女僕の前で泣いちゃって。好きになっちゃったんだなって、僕だって泣きたくなった。僕にとってはコーチとの恋が上手くいかないほうがよかったわけだけど、でも透子さんの泣き顔は見たくない。だから本当に付き合うなら絶対に泣かせないでほしい。もし彼女が次に僕の前で泣いたら、その時は僕が必ず取り返す」

「そんな――いつそんなことを」
「天龍で」

そういえば天龍で田淵はトイレに行くとコーチに続いてすぐに席をたった。
本当は龍道コーチと話していたのだ。
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