―17段目の恋― あのときの君とまさかの恋に落ちるとき
「それじゃ」
透子もその場を去ろうとすると「水之さん」と呼び止められた。

意味なくドキッとして振り向くと、「今度、振動止めあげるわね。私たくさん持ってるから」と、金子さんが瞳を動かさずにっこり笑った。

――龍道コーチに関わるべからず――

透子は肝に銘じながら更衣室に戻った。
ロッカーを開けたとたん、バッグの中でスマホの着信音が響く。
見知らぬ番号だが出てみると、「おせーよ」といきなり叱られた。

「えっと……」
聞き覚えがある声のような気もするが、こんなに親し気で乱暴な人って誰だっけ?
うまく思い出せない。

「俺だよ」
「俺?」
「まじでわからないの?」
「わからない」
「今まで話してただろ」
「えっと」
「龍道だよ」
「えっ!」

思わず大きな声になり、更衣室内にいた人達が一斉に透子に視線を向けた。
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