―17段目の恋― あのときの君とまさかの恋に落ちるとき
透子より2つ年下で32歳の田淵は、2年前に透子がいる広報部に転属してきた。
178センチの長身に引き締まったスポーツマン体型。すっきりとまとまった少年のような顔立ちは、白いTシャツとジーンズだけでおしゃれに見えるタイプだ。
口は悪いが隣の席のよしみか、透子の方が先輩になるからか、田淵は透子に親切だ。
仕事がうまく運ばない時にはいつも何気に助けてくれるし、自宅のPCにお茶をこぼして壊してしまったときには「ちょうど売ろうとしていたパソコンがあるから」と、すぐに自分のノートパソコンを透子の家に送ってくれた。1年間のセキュリティまでついていて、とても助かった。
頭痛がするといえば「大した仕事してないんでしょ。もう帰んなよ」と、どこからか調達してきたアスピリンをくれて、だけどその言い方はどうよと思いながらも早退すると、夜には「具合どう?」とショートメールが届く。

田淵は透子の身近にいる男の中で一番優しい。
といっても身近な男友達が他にいるわけでもないのだが。
そういえばと、透子はふと思い出した。
以前、透子が英会話教室で知り合ったゲイのカップルもお洒落で優しかったなと。

田淵はもてるのに彼女がいない上、社内の可愛い女子たちからの多くのアプローチにもなびかない。もしかして田淵もゲイなのかもしれない。
べつにだからどうということもないのだけど、田淵と2人でランチを食べているときに、またそんなことを思い出したので聞いてみた。

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