―17段目の恋― あのときの君とまさかの恋に落ちるとき
「いったいどういうこと? もしやコーチ、だれかひき逃げしてきて追われているとか」
うずくまったひどく窮屈な態勢で尋ねる。

「面倒な奴に見つかっちゃったんだよ。悪いけどしばらくそのままでいて」
乱暴に何度もハンドルを切るので、前が見えない透子は防御するすべもなく、そのたびに頭や肩がダッシュボードやサイドにごつごつ打ちつけられた。

しばらく走ってから「もういいよ」と言われて顔を上げると、まるでトンネルのような入り口を通り抜け、後ろでガーっとシャッターが閉まった。

「ごめん、悪かったな」
車10台分はある広いガレージに龍道コーチは車を止めた。
ハンドルから手を離し、サングラスを外した龍道コーチの頭は金髪のウィッグが右に大きくずれて、前髪が斜めに傾いた奇抜なヘアスタイルになっている。

「それ、斬新な髪型だけど、ファッションですか?」と透子が龍道コーチの頭を指すと、
「なわけないだろ。熱いな、これ」と、龍道コーチはウィッグを外して後部座席に放り投げた。

「なんで変装? というか、私はどうしてここまで連れてこられたの?」
「マヤが今日は友達と飲みに行くことになったから車に乗って帰ってくれっていうからさ。せっかくだからついでに君を車で送っていこうと思ったんだけど、まさか金子さんに出くわすとはな。ウィッグはマヤのだよ。焦ってとっさにかぶって変装してみたんだけど」

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