―17段目の恋― あのときの君とまさかの恋に落ちるとき
次の週、テニスのレッスンが終わって帰ろうとしたところで受付のマヤさんから声をかけられた。
年齢は24、25歳くらいだろうか。金髪に染めたボブの髪型が、マヤさんの色白で北欧系の美少女を思わせる顔立ちによく似合っている。しかし態度がぶっきらぼうなせいで、中高年層の生徒たちからは「元ヤン」と噂されている。確かに高級テニススクールの受付嬢としては浮いているが、無駄な愛想も笑顔も振りまかないところがいっそ清々しい。

「水之さん、来月から初級に認定が出てますけど、どこのクラスにします?」
「えっ!」
田淵に言われたようにまじで永遠に昇級しないかも、と考えていたので驚いた。

「何か問題でも?」
表情もなければ言葉に抑揚もなく、やはり不愛想に見える。というか不愛想だ。

「いや、下手だから予想外でびっくりしちゃって。初級に上がって大丈夫かな」
「大丈夫です。というか、どのみち初めてクラスはマックス半年しかいられませんから」
ああ、そういうことね。タイムリミットということか。

「じゃあイツキコーチのクラスで」
「残念。イツキコーチは初級のクラスを持っていません」
全然、残念ではなさそうに言う。

「だったら金曜のこの時間の初級のクラスで」
イツキコーチしか知らないので、他の人なら別に誰でもよかった。

「となるとここだけど、あ、でも多分ここは定員がいっぱいのはず……」
マヤさんがPCをカチャカチャ鳴らし、クラスの情報を確認している。すると後方から「大丈夫だよ」という声が響いた。
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