―17段目の恋― あのときの君とまさかの恋に落ちるとき
田淵の登場でクラスには今までにないウキウキ感が漂っている。
そんな期待に応えるように田淵はどんな下手な相手も上手にフォローし、笑顔と愛嬌を振りまいている。
コーチ顔負けの接待ぶりに透子は驚くが、そのおかげで田淵の知り合いである透子への当たりが弱くなったのは有難かった。
しかしその一方、なぜか龍道コーチのあたりが一層強くなった。
「だからさ、腕の角度は変えないって言ったよな」
他の生徒に対する優雅な態度が透子になると仮面のように外される。
透子は言われたとおりに球を返しているつもりなのに、どうしてもラケットを降る腕が下がっているらしい。
龍道コーチは眉間をよせながら透子に近づき、自分のラケットを足元に置くと「こうじゃなくて、こうだっつーの!」と、透子の腕をつかんで乱暴に振ってあげる。
他の人に教えるときには「腕の位置は動かさないでくださいね」と言ってにっこり笑う場面になるはずなのに。
「いたたたたた…もうちょっと優しくしてよ。骨が折れちゃう」
先週の出来事があったせいでつい気が緩み、無意識にため口になっていた。
「ふん。階段から落ちても骨折しなかった頑丈な骨がそれくらで折れるわけないだろ」
憎たらしい。
11年前に助けなければよかったと思うほど憎たらしい。
「折れたら訴えてやる」
「もし折れたとしたら、それは骨粗鬆症だな。老化によるカルシウム不足」
「老化って……」
透子が怒って頬を膨らますと、ガキ見たいな顔して怒るんだなとにやりとし「いいか、上からこのまま下ろすんだよ」と、もう一度透子の腕を握ってやって見せた。
この様子はしっかり他の生徒たちにチェックされ、嫉妬の視線を浴びていることに透子は気づかなかった。
そんな期待に応えるように田淵はどんな下手な相手も上手にフォローし、笑顔と愛嬌を振りまいている。
コーチ顔負けの接待ぶりに透子は驚くが、そのおかげで田淵の知り合いである透子への当たりが弱くなったのは有難かった。
しかしその一方、なぜか龍道コーチのあたりが一層強くなった。
「だからさ、腕の角度は変えないって言ったよな」
他の生徒に対する優雅な態度が透子になると仮面のように外される。
透子は言われたとおりに球を返しているつもりなのに、どうしてもラケットを降る腕が下がっているらしい。
龍道コーチは眉間をよせながら透子に近づき、自分のラケットを足元に置くと「こうじゃなくて、こうだっつーの!」と、透子の腕をつかんで乱暴に振ってあげる。
他の人に教えるときには「腕の位置は動かさないでくださいね」と言ってにっこり笑う場面になるはずなのに。
「いたたたたた…もうちょっと優しくしてよ。骨が折れちゃう」
先週の出来事があったせいでつい気が緩み、無意識にため口になっていた。
「ふん。階段から落ちても骨折しなかった頑丈な骨がそれくらで折れるわけないだろ」
憎たらしい。
11年前に助けなければよかったと思うほど憎たらしい。
「折れたら訴えてやる」
「もし折れたとしたら、それは骨粗鬆症だな。老化によるカルシウム不足」
「老化って……」
透子が怒って頬を膨らますと、ガキ見たいな顔して怒るんだなとにやりとし「いいか、上からこのまま下ろすんだよ」と、もう一度透子の腕を握ってやって見せた。
この様子はしっかり他の生徒たちにチェックされ、嫉妬の視線を浴びていることに透子は気づかなかった。