―17段目の恋― あのときの君とまさかの恋に落ちるとき
「うわっ」
振り向いた透子は、思わず声をあげた。

いきなり目の当たりにするには声をあげて驚くレベルの端正な顔だちの男が立っていたからだ。
身長160センチの透子が見上げる場所に顔があるので、180センチはある長身に、ネイビーのポロシャツと白いハーフパンツのテニスウエアがよく似合っている。

「クラス表では人数マックスで埋まってるけど」
マヤさんは顎でパソコンの画面を指し、疑り深い目を彼に向けた。こんな超イケメンに対しても平等にそっけない。

「初中級に上がる生徒がいるから大丈夫」
「だそうです」と、疑り深い目をマヤさんはそのまま透子に移動させた。

彼は透子の名札にちらっと眼をやり、「じゃ、水之さん、来月からよろしくね」と、白い歯を見せて去っていった。マンガだったらバックにバラの花びらが舞うような華やかさだった。

「今の人、誰?」
「龍道新。彼が次のクラスのコーチです」
「えっ! あの人がコーチ?」
「そう。我がスクールの看板男、人気ナンバーワン・コーチです」
「あの、気のせいか――」
周囲からの視線を感じる。強く。

「気のせいじゃないですね、水之さん睨まれています」
見られているのではなく、睨まれている?

「どうして?」
「言いましたよね、彼人気ナンバーワンだって。嫉妬ですよ。厄介ですから気を付けてくださいね」
マヤさんは目を細め、口角をキュッと上げた。こういうときは嬉しそうな顔を見せるらしい。
< 5 / 130 >

この作品をシェア

pagetop