―17段目の恋― あのときの君とまさかの恋に落ちるとき
「水之さんは僕の恩人だから迫られても無下にできないんだよ、とか言えば親父も納得するだろう、なーんて作戦じゃないかな」

あり得そうな筋書きだ。

「やだ、それじゃ私がコーチに迫っているってこと?」

透子が頬を膨らませて憤る。

「あくまでも想像だから」
「恩着せがましくイケメン御曹司にまとわりつく女って最悪じゃない。
そんな作戦のために用意されたワンピースを着てのこのこパーティに参加している私って悲しすぎる」
「あとさ、他の女の子だとあとで面倒なことにもなりそうだけど、水之さんなら何となく許してくれそうじゃない?」
「それ、わかる。透子さん、お人好しだからな」と田淵も同意する。

透子は田淵をちらりと睨んでグラスのワインを一気に飲み干した。

「むかついてきた。飲んでやる」

泉コーチが笑って、ビールとワインをボトルごと調達してきた。
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