―17段目の恋― あのときの君とまさかの恋に落ちるとき
「だったら?」

「乗り掛かった舟ってことで」

「乗り掛かった覚えはないけど」

「でも実際、乗っている」

「勝手に乗せたのよね」

透子が語気を強めると、龍道コーチは笑顔をひっこめ「そう言われればそうだけど」と、ぼそぼそ言って口をとがらせた。

「で、だったらなによ」

「だったらとりあえず、1か月でいいから俺と付き合ってよ」

透子は手を伸ばしてつまんだばかりのクッキーを落とした。

「ねえ、どうしてそうなるのよ」


少しの間、両親からの探りが続くだろう。
だからせめて1か月付き合っている振りをしてほしいと押されて承諾してしまったのは、成り行きとはいえ、コーチの両親と会って嘘の片棒を担いでしまっていたからだ。
こっそり付き合う振りをするわけだが、“付き合うから宣言”を目の当たりにした田淵と泉コーチには、一応事情を話しておこうということになった。
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