―17段目の恋― あのときの君とまさかの恋に落ちるとき
「可能性があったら?」

田淵は隣のテーブルで若い女性がめくっている週刊誌を目で指した。
若いタレントと一般人の恋愛スクープがバカでかい文字で表紙を飾っている。

「ないでしょ。芸能人の方がまだ可能性あるかもしれない」

なんといってもモデルを超えて容姿は端麗、そのうえ龍道グループの御曹司だ。
アラサーの平凡な会社員の女にどんな可能性があるというのだ。

「でもさ、1か月あったらなんでもできるよね」

「なんでもって?」

「大人のいろいろ」

「え、あるわけないじゃない。そんな田淵君たらふしだらな」

「子供かよ。ちゃんと1か月の振りだけで終わりにしてよ。マジになると後がつらいよ」

火照って赤みがさした透子の頬を、田淵は笑ってつまんだ。








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