―17段目の恋― あのときの君とまさかの恋に落ちるとき
「金子さんもコーチがイケメンだからあそこを選んだんですか?」
「いやだ、違うわよ。インドアで設備もいいし、駐車場もあったから」
「なるほど」
「ねえ、水之さんて独身?」

金子さんは唐突に話を変え、「私は未亡人。旦那が2年前に死んじゃったのよ。で落ち着いて時間ができたから、またテニスでもやろうかなと思ったわけ」とにっこり微笑む。
どう答えていいものか、透子は「そうなんですか」としんみりするが、金子さんは「保険金たくさんかけておいて本当によかったわ」とスマホをいじりながら言い、そして「あった、これこれ」と、画面を透子に向けてきた。

『コーチが全員超イケメンのテニススクール発見!』の見出しの記事に、龍道コーチの写真が添えられていた。
本当にイケメンコーチを揃えているらしい。
透子はイツキコーチと龍道コーチといずみコーチしか知らない。
クラスが始まるぎりぎりにロッカールームに飛び込み、着替えるとすぐに帰るので、他のコーチに会ったことがないのだ。

「取材が来るほど有名なのに、全然知らないのお? ホームページにコーチのプロフィールが出てるから他のコーチも試してみたら。まあ龍道コーチがダントツで素敵だけど」
< 9 / 130 >

この作品をシェア

pagetop