庵歩の優しい世界
「えへへ」
「むふふ、入って〜」
二人は不気味な笑う。無駄にウェルカムな感じがとても怪しい、よからぬことでも企んでいるんじゃなかろうか。
「えへへ、じゃないよ。どうなってんのよ……」
「ね、はやく靴脱いで」
ナツ君が急かす。彼はしゃがんで私の靴紐を解きにかかっている。
「わ、分かった分かったから」
「やった!」
「……お、お邪魔します」
というわけで抵抗もむなしく、私はお呼ばれされる運びとなった。
────あの行き倒れ事件からは時は流れ、はや1ヶ月。
にもかかわらず玄関からチラッと見ただけでも段ボールが積み上げられているということは……
まさか荷解きが終わってない?
連行され、リビングルームまでくるとそのまさかが────まさかだった。