庵歩の優しい世界


 ようするに私は寂しかったのかもしれない。


一人暮らしの、それもアウトドア派とは言いがたい21歳が、外に飲みに行く理由などひとつしかない。


自分が一人ぼっちだと言うことから目を背けたいがため、つまり、寂しさを紛らわすためで、ただ純粋に、一緒にご飯を食べてくれる人が欲しかったのだ。


 珠手はそんな私の思いを汲み取ってくれたのか……汲み取っていないのか……ちょっとよくわからない相槌を打った。



「へえ、庵歩って結構ガサツで無頓着だけど、子供を可愛がったりできるんだな」


汲み取っていなかったようだ。


「私のことなんだと思ってるのよ……」



 一見私のことをおちょくりにきたようにも見える珠手だが。

まあ、実際ここに来る目的の半分はそうなのかもしれないけれど、彼はかたくなに私が終わるのを待つと言った。


「……じゃあ、待ってるから」

何やら深刻な話でもあるんだろうかと心配になりながら、残りの時間をせっせと働いた。


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