庵歩の優しい世界


 2時間もこの男が待ってられるのだろうか………。


もしかすると早々に飽きて先に昼ごはんを食べて要るかもしれない。

珠手とはそういう男だった。

女の子を取っ替え引っ替え、見るたびに違う女の子がいたし、いまだにそんな感じだ。



待たせることはしても、待つのはごめんという、世間一般に『クズ』と言われる人種。


それがなんでか、大学に入って間もなく私の友人という立ち位置にいた。


いつの間にか、という感じだった。


しらないうちに人の懐に入るのが上手い、そういう点ではちょっと幸助に似てたりする。


いかにも、幸助は『クズ』ではなく『阿呆』だったが。



 私と珠手のやりとりを聞いていた店長がちょっと早めに上がらせてくれた。

それはとてもありがたい。………しかし私は一体どこで待っているのか分からない珠手を、地球という大きな範囲にて探さなければいけなかった。


もはや、待ってるのかどうかも怪しかった。


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