庵歩の優しい世界
念のため男の……えっと、幸助の生死の確認をして、どうやら生きているらしい彼を男の子とともに協力して私の部屋へひきずった。
非常に重い。
痩せていても、男の人はこんなにも重いものなのか。なんなのだ、何が詰まってるのだ。骨が重いのか? 見た目と重さがちっとも釣り合ってないぞ。
それに「男の子と協力」なんて言い方をしたけど、本当のところ私が幸助の脇に腕をさしこんで綱引きの要領で、ひとり頑張った。
とくに玄関の段差を乗り越えるのに一苦労。
幸助のお尻が引っかかって……。
「ゴリゴリ、ゴツッ」
と、人の体から鳴っていると思いたくない音を響かせながらの運搬作業だった。…………こりゃあ、青あざで済んだら良い方だろうと身を案じる。
そんな風に私が奮闘している間、男の子はと言うと………音頭をとってくれていた。
「わっしょいわっしょいっ」
ぴょんぴょん飛び跳ねて手をひらひらバンザイのポーズ。
なあに、なんてかわいい音頭! 私は癒された。
あんなブラックジョークを言っていた人物とは似ても似つかないくらいキュートで。
………可愛すぎた。
でもまあ幸助を運び終える頃、私はすっかりへとへとになっていたけど。