自信のない恋に優しい愛

「三十歳過ぎてる若宮さんに彼氏がいて、私にいないのはおかしいと思う~」

 社員食堂でお昼ご飯を食べながら、この後輩の言葉に曖昧に微笑んでいる私は弱虫だと思う。
 まだ私は二十九歳なのよ。とか、みんなと違って短大卒だから。とか反論すればいいんだけど、どれもが私の足かせになって言葉にできない。

 まだ二十九歳―― その言葉は所属している部署では通用しない。
 数多くのグループ会社を従えたこの会社は日本国内でも有数の大企業だ。
 でも、それと同時に日本国内でも有数の旧態体質の会社でもあると思う。

 女子社員は二十五,六歳で結婚退職するもの。
 そんな考えばかりのおじさんがいる総務部庶務課では、入社して九年になる私はもはやお局様なのだ。
 それでも他の部署には総合職採用三十歳を過ぎた女性社員だってかなりいる。
 だけどそれは大卒以上の総合職の話であって、短大卒の私がこの会社に採用されただけでも奇跡だったのに、一般職の私が三十歳を目前にして未だに居座っている事の居心地の悪さといったら。
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